COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、タバコ病といわれるように長期間の喫煙や粉じん、大気汚染など有害物質を吸入することで発症する。世界的に患者が増加しており、世界保健機関(WHO)は2020年までに世界の死亡原因の第3位になると予測している。日本で実施された疫学調査では、40歳以上の成人の約9%、約700万人がCOPDという報告がある。しかし、実際に治療しているのは約30万人で、その中でも酸素ボンベを常に携帯しなければならない重症の患者数は約20万人だ。
和光駅前クリニック(埼玉県和光市)の寺本信嗣医師に話を聞いた。
「COPDは、40年以上かけてゆっくり進行する病気なので、初期では症状があまりなく、気づかない方がほとんどです。欧米のCOPD患者は60歳代が中心ですが、日本では70歳代になります。健康診断などで見つかる方が圧倒的に多いのが特徴です」
COPDは、徐々に肺胞が破壊され、一度破壊されたら元には戻らず、治らない病気とされていた。それでも、抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤(2つの薬が一つになったもの)が保険承認され、治療効果が格段に上がっている。
抗コリン薬は、副交感神経を亢進させるアセチルコリンの作用を抑える薬だ。アセチルコリンが活性化していると気管支や肺の細胞が縮むが、抗コリン薬はそれを解放し、肺胞や気道を広げる。
縮んでいる筋肉を緩めて開く作用のLAMA(長時間作用性抗コリン薬)とLABA(長時間作用性β2刺激薬)の合剤は、朝1回吸入すれば長時間効果が続くため、携帯の必要もない。軽症から中等度の患者は、この治療により、息苦しさなどの症状が劇的に改善するようになった。