前走から騎手が替わるとき、競馬新聞にはそのことが明記される。つまりは、騎手が誰なのかは、馬券検討にも不可欠なファクターであるということだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、騎手の乗り替わりが持つ意味について解説する。
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3歳牝馬サロニカは、残念ながら桜花賞目前での出走取消となってしまいましたが、それまでの3戦とも異なるジョッキーが跨がっていました。新馬戦は川田将雅、白梅賞はM・デムーロ、エルフィンSは福永祐一でした。いずれも当代一流の乗り手ですが、クラシックに向かうような3歳馬、特に牝馬は、なるべくジョッキーを固定したいものです。
この時期の牝馬は繊細で神経質。鞍上が替わったことが分かります。
馬は自分の走るリズムを持っている。ジョッキーにも騎乗リズムがあり、二つがうまく噛み合うといい。トップジョッキーが何度か乗れば馬のリズムに寄り添うことができます。馬も「分かってくれてるね」と安心します。
ジョッキーにとっても、何をしたらスイッチが入り、何をしたら脚が鈍るのかが分かる。どれだけ足を使えるかをジョッキーは常に考えます。ゴール板までの走りがエネルギーにあふれている状態。才能ある3歳馬ならば、使える足がレースごとに伸びていく。どこで追い出せば勝てるのか、お手馬にすることでジョッキーの感触が冴えてくるのです。