ライフ

嘔吐や耳鳴り 医師の決めつけで重病が放置された誤診の例

なぜ誤診は起こってしまうのか?

「私の誤診率は14.2%である」──神経内科の権威で東大名誉教授の冲中重雄氏は、1963年、東大を退官する際の最終講義でこう述べた。

 これは臨床診断と剖検(病理解剖)結果を比較して出した数字で、医療関係者はその率の低さに驚嘆したが、市井の人々は逆に、日本最高の名医でも14%も誤診があるという事実に衝撃を受けた。

 また、2004年に世界的に有名な医学専門誌『Archives of Internal Medicine』に、フランスの医師らがICU(集中治療室)で死亡した人々の剖検結果についての論文を掲載した。そこには〈生前診断の約30%は誤診だった〉と書かれていた。

 誤診が起こる理由としてもっとも多いのが診察時の「見誤り」や「見落とし」だ。実例を見ていこう。

〈眼科医に緑内障と診断されて以来、定期的に眼科で検査を受け、点眼薬を使い続けたが、右目の視野がどんどん狭くなっていった。治療効果が得られずおかしいと思い、大学病院でCTスキャンを撮ったところ、「脳腫瘍」だと宣告された〉

 脳は人体において最も重要な器官であるが、疾患の症状は多岐にわたるため、脳が原因だと疑われないケースもある。

 この患者は腫瘍摘出手術を受けたが、結果的に右目は失明してしまったという。上野毛脳神経外科クリニック院長の小林信介氏が解説する。

「脳腫瘍が視神経を圧迫し、視力悪化や視野狭窄などの症状が出るケースです。急激な視力悪化など緑内障と症状が似ているため、誤診されることが多い。もっと早く精密検査をしていれば、失明せずに済んだかもしれません」

 高齢者の場合、脳腫瘍の発症部位によっては、軽度の認知症を引き起こすこともある。

「もの忘れが1年ほど前からひどくなり、言葉が出なくなったという男性が先日来院され、MRI検査をしたところ脳腫瘍が見つかりました。腫瘍を手術で取り除いてからは、もの忘れの症状が改善されました」(同前)

関連キーワード

関連記事

トピックス

山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン