バブル経済真っ盛りの1988年から1991年にかけて、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館刊)に連載された大ヒット漫画『ツルモク独身寮』。
高知の工業高校を卒業後、東京の郊外にある木工家具製作会社に就職した主人公が、会社の独身寮の住人たちと繰り広げる人間模様を描いたコメディだ。自身も寮生活の経験があるという著者・窪之内英策氏が、当時を振り返る。
* * *
1984年に高知県の工業高校を卒業した後、愛知県の大手家具メーカー・カリモク家具に就職。1年ちょっとの短い時間でしたが、独身寮で生活しました。『ツルモク独身寮』はその体験をもとに描いたんです。
〈1年余りの寮生活の後、夢だった漫画家になるために退社する〉
寮に入ってからは机もなくて、なかなか漫画を描く機会がなかった。なので、自分のなかで「漫画を描きたい」という思いが溜まっていったんです。
退職届を出したとき、当時の部長にはボロカスに言われました。「お前がなれるわけねぇだろ」「夢見る暇があったら仕事のひとつもできるようになれ」と。当時は「なんでそこまでいわれなきゃいけないんだ」と悲しい気持ちになりましたが、当時の部長と近い年齢になって “部長は親心で現実を見ろと言ってくれたんだ”と気付きました。
当時は浮ついた若手社員も少なくなかったし、僕以外にも「役者になりたい」といって辞めていく10代の社員が多かったですから。