少子高齢化社会なのに持ち家率の高い日本では、夫婦で何軒もの空き家を所有する人が増える見込みだと、不動産の調査・コンサルティングを行うスタイルアクトの沖有人さんは言う。
会社員のIさん(30才)もその1人。母の生家が空き家なのに加え、父が病に倒れてしまい、実家の処分も一人っ子である自分に任せられることに不安を感じている。
「母の生家だけでも処分したくて、所有者の母に頼んだのですが“思い出を奪わないで”と怒られました」
Iさんのような問題に悩む人は年々増えている。
◆家は思い出の塊だが保持するにはコストが
「空き家を所有していると、固定資産税と都市計画税が毎年かかります。一軒家の場合、修繕費や管理費なども必要で、ただ持っているだけでは損することに」(沖さん)
人が居住している土地・建物や、空き家を更地にして保有した場合、固定資産税(1.4%)と都市計画税(0.3%)が毎年かかる。しかし、建物が建っている空き家にのみ、「住宅用地の課税標準の特例」が適用され、税が優遇される。ただし、特定空き家に認定されると、優遇されなくなる。
しかし、売るか貸すかすればいいとわかっていても、「思い出の実家は残しておきたい」といった心情面での問題や「きょうだいに反対された」などの相続人同士のトラブルなどで処分できないのが実情だ。しかも、建物が建っている空き家は税金が優遇されるため、「ボロ家だろうと、建っていた方がいい」と、むしろ空き家を放っておく人が多かったのだ。
◆法律の改正で取り締まりが強化
しかし、これからはそれでは済まされないと、税理士の坂部達夫さんは言う。
「空き家が増えたことで、近隣住人からの、ごみの不法投棄などに関するクレームが増え、2015年に『空家等対策の推進に関する特別措置法』が成立。この法律では、危険で不衛生な空き家を、各市区町村が『特定空き家』と認定すると、所有者に対して、撤去や修繕の命令が出せます。これに従わなければ、市区町村が強制的に空き家を撤去し、その費用が請求されます」
しかも、特定空き家は税制優遇が受けられなくなるので、固定資産税で最大6倍、都市計画税で最大3倍が課せられることになる。
ただし、特定空き家に認定されたからといって、すぐに固定資産税などが上がるわけではない。指定の期間内に修繕などをして状況を改善すれば、再び税制優遇を受けられる。廃墟と化した空き家を放置している人は、特定空き家にならないよう、すぐ対応を。
※女性セブン2017年5月4日号