散り際が美しい桜の季節が終わっても、いまだ「満開」の成績を残す男たちがいる。いずれも、“老境”にさしかかった選手たちである。今季のプロ野球の主役たちは、揃いも揃って「おじさん」ばかりだ。加齢とともに成績が残せなくなるのはスポーツ選手の宿命だが、それに抗う活躍には、彼らの若かりし頃を知るファンほど胸を熱くしてしまう。
「『灯火消えんとして光を増す』という言葉があるように、ロウソクが消える寸前にパッと明るく輝くことがある。まさにそれやないですか」と、野球評論家の江本孟紀氏は拍手を送る。
「僕は2桁勝てなくなったら34歳でさっさと引退しましたが、ベテランの置かれる環境は厳しい。シーズン序盤に頑張らないと、後半になればなるほど若手に出場機会を奪われる。そうしたなかで、限られたチャンスを掴んだベテランの活躍が目立っている」
その一人が広島・新井貴浩(40)だ。昨季は2000本安打を達成し、25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献。阪神で出場機会を減らした印象を拭い去るかのような「復活劇」は、今季も続いている。
「2つ歳上の黒田博樹が引退し、チームリーダーとしての自覚が強くなった。緒方(孝市)監督には『補強はせずチーム力を底上げする。打線の中心として4番を打ってほしい』とキャンプ中に告げられたといいます。開幕から4番に座り、4月12日の試合では、チームでは衣笠祥雄以来30年ぶりとなる40歳以上での2打席連続アーチを放ちました」(スポーツ紙デスク)
不惑の4番が開幕ダッシュの功労者となった。
2012年に打率3割4分、104打点で二冠を達成、本塁打もリーグ2位の27本を放つ活躍で日本一の立役者となった巨人・阿部慎之助(38)も、近年低調だった打棒が完全復活。
「このオフは自主トレに小林誠司(27)を帯同させた。後継者育成に専念するのかと思われましたが、開幕から不動の4番で三冠王も狙えるほど。今季中の2000本安打も射程圏内で、WBC帰りの小林の不調を差し引いてもおつりがくる活躍です」(巨人担当記者)
年俸は2014年シーズンの6億円から大幅に下がって今季は2億6000万円。しかし今の活躍はそのダウン分を取り戻す勢いだ。