南シナ海を含む西太平洋の海洋覇権を狙う中国の脅威を無力化するために、日本がとるべき軍事的施策はなにか。軍学者・兵頭二十八氏は、日本政府には大きな誤解があるという。その誤解と、現実的にとるべき施策について兵藤氏が語る。
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政府与党内の一部に、「日本も長射程の巡航ミサイル(射程1850kmのトマホークのようなもの)を持つべきだ」という声を聞く。
その人たちはアジア地図をよく見直した方がいい。海自の基地近くから黄海や渤海の敵空母を巡航ミサイルで狙おうとすれば、途中で朝鮮半島や遼東半島の上を低空で横切らせるしかない。北朝鮮はもとより、反日の韓国政府が政治的に受け入れるわけがないだろう。
弾道ミサイルならば飛翔は宇宙空間なので、太平洋から日本列島越しに発射しても、コース直下の住民を騒がせることはない。また飛翔速度が旅客機並にスローな巡航ミサイルとは違い、途中で撃墜されてしまう懸念もないのだ。
●ひょうどう・にそはち/1960年長野市生まれの軍学者。近書に『日本の武器で滅びる中華人民共和国』(講談社+α新書)、『日本の兵器が世界を救う』(徳間書店)など。
※SAPIO2017年5月号