小池百合子都知事と東京五輪組織委員会会長・森喜朗氏の五輪をめぐる対立はますます先鋭化している。そうしたなかで、いよいよ森氏側の反撃の準備が整った。五輪招致の苦労話を綴った『遺書 東京五輪への覚悟』の出版はその狼煙といえる。
4月18日夜、安倍首相と小池知事の“料亭会談”が行なわれた日、各地で小池批判の火の手があがった。
「小池都知事の言葉を信じて待っていたが、裏切られた思いだ」(黒岩祐治・神奈川県知事)
「枝葉の話ばかりぐるぐる回っていて、結果として何も決まらない」(上田清司・埼玉県知事)
小池氏は五輪の費用負担をめぐる自治体間の調整を「3月末までに決める」と宣言しながら、期限までに具体的な提案がないことを2人の知事が会見で批判したのである。
五輪の費用分担問題は小池都政の最大のアキレス腱といえる。東京五輪の開催経費については、都の調査チームが「3兆円を超える可能性がある」と指摘し、小池氏は費用削減を掲げた。
それを受けて組織委員会が正式に試算した全体費用は最大1兆8000億円。組織委員会のスポンサー収入などは5000億円にとどまっており、残りの1兆3000億円は都が負担するのが原則だった。だが、そんな巨額の負担に都民の理解を得るのは無理だ。そのため五輪の一部の競技を開催する他の自治体にも負担を求める調整が必要となるが、それが全く進んでいない。それもそのはずである。