東京五輪組織委員会会長の森喜朗氏(79)は五輪招致の苦労話を綴った『遺書 東京五輪への覚悟』を出版して改めて小池百合子都知事(64)との対決姿勢を鮮明した。
五輪の栄誉をさらわれ、IOC理事への道を邪魔された森氏が“このままでは死んでも死にきれない”とさらなる危機感を募らせたのは、五輪組織委員会会長の座まで危うくなってきたことだ。活発化する小池氏の“森おろし”工作である。
「利権や不正によって不当に高い経費負担を都民に強いていないかをチェックし、改善する」
小池氏は昨年9月、都政改革本部内に調査チームを設置し、組織委員会に対して都の「監理団体」の指定に応じるように申し入れた。
東京都から組織委員会への出資比率は97.5%にのぼり、監理団体に指定すれば都が強い調査・監督権限を行使できる。狙いはエンブレム問題など「森王国」と化した組織委員会の不祥事を徹底的にあぶり出し、トップの森会長の監督責任を問うことにあったとみられている。
森氏は前代未聞の手段で対抗する。組織委員会から東京都に出資金57億円を突き返し、監理団体指定を拒否したのである。
水面下の攻防はその後も半年以上にわたって続いている。今年2月には小池氏側が東京都から組織委員会に出向し、森氏の覚えめでたかった“側近中の側近”の役員室長を人事異動で交代させ、都庁に戻した。これも「森王国」の情報収集のためと見られている。すると、その職員は森氏に相談して都庁を退職し、組織委に直接雇われるかたちになった。森氏側は“敵の手に落ちた”職員を奪還してみせたのである。