「天才、天才っていわれますけど、そんな報道を見ると、どこか他人事みたいに『へぇ~』って。ピンとこないというか、実感がないんです」
そう笑いながら話すのは、昨年10月、史上最年少の14才2か月でプロ入りした藤井聡太四段(14才)の母・裕子さん(47才)。
藤井四段は、インターネットテレビ局AbemaTVの企画で、非公式戦ながら将棋界の「絶対王者」羽生善治三冠(46才)を破る快挙をなし遂げた。
その強さを、40年間真剣勝負を見続けてきた将棋写真家の弦巻勝氏がこう語る。
「彼は将棋を始めた最初の頃からコンピューター将棋に親しんできた新世代です。師匠や先人の戦術を地道に踏襲するといったそれまでの世代の成長の仕方とは違い、一貫して合理的です。『黒船が来た』と、多くの棋士たちが戦々恐々としていることでしょう」
そんな天才棋士は、瀬戸焼で有名な愛知県瀬戸市で生まれ育った。
「通っていた幼稚園がモンテッソーリ教育を取り入れていて、個人個人、園児の個性を大切にしてくれました。小さい頃の聡太は、外で遊ぶのが大好きで、活発でしたね」(裕子さん)
ヤンチャな少年が将棋に出合ったのは5才の夏。祖母に「スタディ将棋」という入門セットを買ってもらうと一気に魅力にはまり、その冬から将棋教室へ通い始めた。両親もさぞかし将棋の達人なのだろうと思いきや、意外にも、両親ともに将棋はささない。趣味にしているのは音楽だという。
「私は小さい頃にバイオリンとビオラを習っていて、今でもママ友とアマオケに参加しています。私は息子ほどのめり込むタイプではないので、気分転換という感じです。主人(正史さん・48才)はジャズの愛好家で、レコード集めをしています。けど、家にたまってしまって…大変ですね(笑い)」(裕子さん)
ならば、聡太くんには音楽の素養もある?
「いや、聞くのは好きなようなんですが、楽器を演奏したりする音楽の授業は好きじゃないみたいで(笑い)」(裕子さん)
正史さんが1年前から東京に単身赴任していて、現在、藤井四段は裕子さんと4才年上の兄と実家暮らし。月3回ほど対局のために東京と大阪へ遠征している。
「寂しい思いをさせているかもしれませんが、聡太には将棋というやるべきことがありますから。ただ、将棋という世界だけでなく、いろいろなことに興味を持ちつつ、人間的な成長も同時にしてほしいと思っています」(裕子さん)
藤井くんの趣味は電車。遠征から帰ってくると、観光地の話よりも現地の電車の話を楽しそうにするのだという。天才棋士の素顔は、普通の14才なのだ。
※女性セブン2017年5月11・18日号