新築マンションが華々しく分譲される一方で、年々深刻な問題となっているのが築年数の経った「老朽化マンション」の惨状だ。修繕しようにも痛みが激しく、かといって建て替えようにも資金が足りず、残った住民の合意も得られない──。果たして日本のマンション市場はこのままでいいのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が警告する。
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日本には約630万戸以上の分譲マンションが存在する。その中で約200万戸が築30年以上だと推定される。
一方、新築の分譲マンション供給は年々減少している。建築費は人手不足から高止まりしたまま。用地取得費も、マンションの開発事業がやりやすい都心エリアでは高騰が続いている。インバウンド需要を受けているホテル業界との競合も目立つ。
建築費も用地取得費も、今後下落するとは思えない。したがってこの先、新築分譲マンションの供給はますます細ると予測できる。
同時に、既存のマンションは年々歳々築年数を増やし続ける。あと数年で、既存の分譲マンションの大半が築30年以上になるはずだ。
鉄筋コンクリート造のマンションはいったい何年住めるのだろう? 実は、マンション自体の歴史はさほど古くない。今のような分譲型のマンションが本格的に日本に登場したのは約60年前。つまり、この国には築100年のマンションは1棟もないのだ。
鉄筋コンクリート造の建物なら、100年程度を経過したものはある。また、理論的に鉄筋コンクリート造の建物は100年の耐用年数がある、とも言われている。
しかし、日本人は新築好きだ。築30年を過ぎたマンションでは「そろそろ建て替えか」という話が管理組合で出始める。
実際に建替えられたマンションもある。ただ、数はさほど多くない。国土交通省によると平成28年4月1日時点で、準備中も含めて252例。膨大な老朽マンションのストックに比べると、あまりにも少ない。
先日、「マンションは日本人を幸せにするか(集英社新書)」という拙著を刊行した。そこで詳しく述べたのであるが、日本における鉄筋コンクリート造の集合住宅である「マンション」という住形態は、未だにしっかりと日本人の生活に定着したとは言い難い状態だ。
何よりも「入口」についてはスマートで華やかだが、「出口」についてはあらゆる分野が未整備で経験値に乏しい。つまり、新築マンションを分譲する段階では派手な広告や販売活動によって夢も希望もある状態に見せてくれるのだが、建て替えたり取り壊すことに関してはルールが非現実的。さらに実例が少なすぎるのである。
大きなハードルは2つある。それは、法律と資金だ。