中国で安易な人工中絶手術が大きな社会問題となっている。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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まるで飴玉をなめるように緊急避妊薬を口にする──。
こんな叫びにも似た嘆きが目を引き話題となったのは、『中国新聞週刊』(3月31日発売)のタイトルである。正式には、〈中国人口流産調査 少女は飴玉を食べるように緊急避妊薬を飲む〉だ。副題には年間900万回も中国で人工中絶手術が行われているとの説明もついていた。
この年間900万回(2014年と2015年の年平均回数)について記事ではWHOの公開している数字──2010年から2014年の平均で年間約5600万回──と比較し、6分の1が中国で行われていると指摘している。
中国における人工中絶手術についての一般的な認識では、1995年にピークを迎えた後、徐々に下降してきたとされ、最近では実質的な第二子解禁という政策的な後押しもあり、減ってきていると考えられてきたが、意外なことに未成年が中心となってこの数字を押し上げているのだという。
記事の中では病院関係者の話として、16歳の女の子が同じくらいの男の子に付き添われて来院し、春節の紅包(お年玉)で支払おうしたケースも多いという話を紹介しているから驚かされる。
統計によれば、人工中絶を行った女性は、その47.5%が25歳以下で、そのうち49.7%がまだ成長過程の年齢であったというのだ。さらに注目されるのは人工中絶に対する人々の考え方だ。
記事中で紹介されている統計によれば、中絶手術を受けた女性のうち、55.9%が初めてではなく、複数回手術を受けている女性のうち、45%が半年から1年半の間に再手術を受けているというのだ。また、調査対象となった女性のうち、およそ13%がすでに3回以上も手術を受けていたのである。
あまりに安易に考えすぎているのではないかと心配になるのも当然だろう。