日本神話の1つである『天孫降臨』には、次のような記述がある。
《天照大神(中略)に、八尺瓊勾玉、及び八咫鏡、草薙剣、三種の宝物を賜ふ》
端的に説明すると、天孫である邇邇藝命が天照大神から預かった3つの宝物を持って地上に降り立ったという伝説である。それから長い年月を経て「三種の神器」と名を変えた宝物は、代々、時の天皇に受け継がれてきた。
生前退位が間近に迫ってきた。2019年のはじめ、今からおよそ1年半後には新たな天皇が誕生しそうだ。三種の神器もまた、次の“持ち主”に移る時が近づいている。
4月21日、有識者会議の最終報告が安倍晋三首相(62才)に提出された。退位後の天皇皇后両陛下の称号や陵墓、お世話をする職員の組織体系といった多岐にわたる議論の中で、三種の神器の扱いもまた論点になった。
「三種の神器のほか、皇位と共に伝わるべき物、つまり天皇の位にある人が持つべき物を『由緒物』と呼びます。それらが陛下から皇太子殿下に受け継がれるにあたり、“贈与税が発生するのではないか?”という議論が持ち上がったのです」(皇室ジャーナリストの山下晋司氏)
皇族方とはいえ、物を買えば消費税を払うし、遺産相続が発生すれば相続税がかかり、資産を誰かに譲ろうとすれば贈与税が発生する。私たちと同じ税制が適用される。由緒物には、歴代天皇の肖像画や直筆文書といったものの他に、皇居内にある建物の「宮中三殿」や京都にある「東山御文庫」などもある。
「昭和天皇が崩御した際には約580点の由緒物があったとされ、それらは陛下へと受け継がれました。相続税法には由緒物は非課税と明記されていますが、それは天皇の終身在位を前提に作られた法律です。つまり、崩御後の『相続』は規定していましたが、生前退位に伴う『贈与』は想定していませんでした。現行のままでは、国宝級の品々に莫大な税金が課されてしまうわけです」(皇室記者)
それを踏まえて、最終報告には次のように記された。
《退位に伴う場合であっても、皇位継承に伴う由緒物の承継であることには変わりはないことから、相続の場合と同様に由緒物に対する贈与税も非課税とすることが適当である》
由緒物にかかわる贈与税の問題は一応の解決をみそうだ。
撮影/雑誌協会代表取材
※女性セブン2017年5月11・18日号