皇居・東御苑にある「三の丸尚蔵館」は、昭和天皇崩御後の1989年6月に皇室から国庫に寄贈された美術品を研究、展示するため、1993年に開設された。
天皇陛下がすべての財産を相続すると莫大な税金がかかってしまうことから、一部を寄付したのだ。
「現在では、皇室に代々受け継がれた絵画・書・工芸品などの美術品類に加え、香淳皇后や故秩父宮妃の遺贈品、三笠宮家からの寄贈品など約9800点を収蔵しています」(宮内庁関係者)
宮内庁管理の美術品は、慣例的に国宝や重要文化財に指定されないのだが、狩野永徳の『唐獅子図屏風』、葛飾北斎の『西瓜図』、伊藤若冲の『動植綵絵』など歴史的・文化的価値の高い物も数多い。昨年春に東京都美術館で開催され、約45万人が来場した若冲展にも三の丸尚蔵館所蔵の作品が展示された。
「もともとは研究と保管のみが目的で、一般への公開については博物館や美術館への貸し出しを行う予定でした。しかし、陛下をはじめとした皇族方の意向もあって館内に展示室が設けられました。ただ、なにぶん手狭で定期的に展示会を行っても公開できるのはほんの一握りのみ。外国人観光客を含め来館者が増加していることから、近いうちに増築が行われる予定です」(前出・宮内庁関係者)
今回の生前退位でも宝物が増えそうだ。入館料は無料。皇室の歴史を感じに足を運ぶのも一興だろう。
撮影/雑誌協会代表取材
※女性セブン2017年5月11・18日号