貴乃花親方が現役だった時代の若貴ブームを彷彿させる現在の相撲人気を下支えするのが、土俵上でのガチンコ力士たちのぶつかり合いだ。30年以上にわたって八百長問題を追及してきた本誌・週刊ポストだからわかる「ガチンコの証左」とは──。
まず注目すべきは、7勝7敗で千秋楽を迎えた力士たちの取組内容だ。
稀勢の里が連続優勝を果たした今年の初場所、春場所で千秋楽を7勝7敗で迎えた力士は延べ12人。そのうち勝ち越しを決めたのは6人で勝率はぴったり5割だ(7勝7敗同士の対戦となったケース2番を含む)。
「かつては7勝7敗で千秋楽を迎えたら、勝ち越しを決められるのが当たり前だった。例外は対戦相手が負けたら十両陥落というケースくらい」(協会関係者)
本誌の八百長追及キャンペーンのきっかけも、1979年9月場所の千秋楽で7勝7敗の力士6人が全員勝ち越すという珍現象に疑問を抱いたことだった。そこから「中盆」と呼ばれる八百長の取り仕切り役の存在にたどり着いた。
「八百長が横行していた当時は、7勝7敗力士の千秋楽というと結果はわかっているし、取組内容も対戦相手があっさりと土俵を割るようなものばかりでとにかくつまらなかった。
それが今では全く逆です。むしろ7勝7敗力士の取組はガチンコで必死に勝ちに行くから、白熱した一番になる。春場所千秋楽で勝ち越しを決めた宇良は、体重差80キロ以上の逸ノ城を相手に土俵際まで追い込まれながら、見事な逆転のすくい投げを決めた」(同前)
かつての「結果の分かりきった一番」が今は「最も面白い一番」になるのだ。
※週刊ポスト2017年5月19日号