〈75歳を超えたら抗がん剤治療に延命効果はない〉──4月27日、国立がん研究センターが発表した研究結果が波紋を広げている。
同センターが70歳以上の進行がん患者約1500人を調査したところ、74歳以下では生存期間が延びるなどの治療効果が認められたが、75歳以上では生存率に大きな差はなかったというのだ。
これを受けて、厚労省は今夏に策定する第3期がん対策推進基本計画に、高齢者の治療法研究を新たに盛り込むことを決めた。一連の国の動きに対して国際医療福祉大学化研病院・化学療法部長の高橋豊氏はこう指摘する。
「75歳以上の患者に、一般的ながん患者と同じ量の抗がん剤を投与しても、副作用が強く出て、すぐに治療を中止せざるを得ないのが現実です。この問題の本質は、高齢者に対する薬の適正な量にある。薬の投与量を決めるのに、年齢が考慮されていない現状が問われるべきなのです」
高橋氏が治療した患者の中にこんなケースがあったという。末期の膵臓がんを患った60代のA氏のケースだ。A氏はジェムザールという抗がん剤治療を受けていたが、骨髄抑制(※注)という副作用が出てきたため、治療の継続を断念せざるを得なかった。
【注/※抗がん剤投与により血液を作る骨髄の機能が低下。白血球や赤血球などが減少して感染抵抗力が弱まったり、貧血を起こしやすくなる状態】