中国から入ってきて日本に浸透した文化のひとつに「食」が挙げられる。以来、独自の発展を遂げた「日本の中華料理」が持つ、本場の中華にない魅力を、芸能界きっての食通である中尾彬氏に聞いた。
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冷やし中華も日本オリジナルの中華料理です。
東京・神田神保町にある「揚子江菜館」の「五色涼拌麺(五目冷やし中華)」は、富士山の形をしています。山のように盛った麺の頂上に雲を模した錦糸卵を乗せて、山肌を細く切ったキュウリやチャーシューでデコレート。見た目にも鮮やかな一品です。保存や衛生の行き届いた日本では、冷たい料理が発展する土壌がありますね。
中国人は見た目に気を遣わないから、麻婆豆腐が洗面器みたいな器で出てきて、“ちょっと待て”と思うこともあります。その点、日本は「おいしい」を「美しく味わう(美味しい)」と書くほどで、お皿に盛りつけた時に“わぁすごい”と驚くほどに見た目が美しい。細工物にも目を見張ります。
本場の中華の難点は他にもあります。まず、食べる側からすれば量が多すぎる。たくさん出して食べてもらうのが向こうの礼儀だろうけど、日本ではきっちりと人数分つくることが「おもてなし」になります。
また最近の中国で困るのは、調味料に「旨味調味料」を使う店が増えたことです。缶に入っている調味料をお玉ですくってドバっと入れるのだけど、あれはひどい。最近の中国は食品関係のモラルがだらしなく、職人が育っていない印象です。
【PROFILE】なかお・あきら/1942年千葉県生まれ。1964年「月曜日のユカ」で映画デビュー。俳優として活動するほか絵画や食にも造詣が深く、近年はバラエティ番組に多数出演しさらに活躍の場を広げている。
●構成/池田道大
※SAPIO2017年6月号