高齢化とともに大きな問題となるのが親の介護だ。できるだけ近くで世話をしたいという子供世代の考えから、二世帯住宅を選択するケースも多い。現在、神奈川県湘南地区の3階建ての二世帯住宅で夫と母親(88才)と同居しているのは、元おニャン子クラブの新田恵利(49才)だ。
新田がこの二世帯住宅に住み始めたのは2000年のことだった。当初から、新田の夫妻と母とは完全に「分離」した形での二世帯住宅生活を開始した。これにより、互いのプライバシーが守られ、新田が夫と母の間の板挟みになるといった事態も回避できた。そして、2014年には母が背骨を圧迫骨折し、一時は寝たきりになってしまう。そんな母を在宅介護している新田は、バリアフリーの大切さを訴える。
「ちょうど建てた頃がバリアフリーの走りで、廊下は車いすが通れる幅にして、トイレや浴槽に手すりをつけていたので、介護を始める際に本当に助かりました。ただ、介護ベッドを運び入れる時は苦労しましたね。想像以上に大きかったうえ、介護するにはベッドまわりの360度に空間が必要なので、それまでの寝室には置けなかったんです。代わりに居間として使っていた部屋を片付けて介護ベッドを置いたのですが、やがて来る介護生活を最初から想定して、寝室を設計しておくべきでした」
車いす移動の際に動きづらいからと畳をすべてタイルカーペットに張り替え、何かあった時のため、1階と2階をつなぐインターホンも取りつけた。
「玄関にスロープを設置し、車いすでキッチンに入れるように、シンク下の扉も外しました。照明もリモコン式のものに替えて。母が倒れてから自宅の不備に気づく点も多かったんです」(新田)
最後に新田が指摘するポイントは、お金だ。
「建築時に母は一銭も出していません。『金を出さない者は口も出さない』がわが家のルール。少しでもお金を出していれば言いたくなりますから。このルールのおかげで、母と意見が分かれることはありませんでした」
完全分離、介護時の改築、お金。この3点を押さえた新田家では、一家の関係が極めて良好だという。
「主人と母がぶつかったことは、いまだに一度もありません。私が不在の時“鬼の居ぬ間に”と母と主人でよく焼肉を食べにいっていたくらいです。最近は母が車いすで動けるようになったので、また一緒にご飯に行こうと話しているようです」(新田)
そう語る新田自身、家事をリタイアした母のために毎日夕食を作り、夫や兄とともに献身的な介護で母娘の絆を深めている。同居だからできる触れ合いを大切にしてこそ、二世帯住宅の意味がある。
※女性セブン2017年5月25日号