鳴り物入りでスタートしたAIIB(アジアインフラ投資銀行)が早くもコケ、日米中心のADB(アジア開発銀行)の存在感が増している。AIIBは加盟国数こそADBを上回ったものの、実際に払い込まれた出資金は定款上の資本金の7%にも満たない。単独融資はほとんどなく、多くはADB融資に相乗りしただけだ。産経新聞特別記者の田村秀男氏がレポートする。
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苦境に立つAIIBに救いの手を差し伸べる国際機関がある。他ならぬADBである。実は、財務官上がりの中尾武彦ADB総裁は財務官僚時代から親中派として省内で知られる。
2014年前半に習近平政権がAIIB創立に向け日米などに工作を始めたとき、中尾総裁は拒否反応を示す米国とは対照的に理解を示した。理由はアジアのインフラ資金需要が旺盛で、ADB単独では間に合わないというものだ。中国はインドと並ぶADBからの大借り入れ国である。資金需要に応えるというなら、まず中国にADBへ全面返済させるのがスジのはずだが、中尾氏は「問題ない」と断じた。
中尾氏はアジアの資金需要について、2009年の試算で8兆ドルに上ると言った。2017年3月には総額26兆ドル、毎年1.7兆ドルに上ると大きくかさ上げしたが、実需とはかけ離れた誇大妄想値に近い。アジア各国がインフラ整備したくても、実行は返済条件次第だ。
そもそも発展途上国全体の国際市場での証券発行は残高でみても2兆ドル程度である。それに近い規模の資金需要に国際金融市場が応じられるはずはない。中尾氏らはそんな破天荒な予測をAIIB肯定の材料に使っている。