国内

住職が「私も死んだらここに入る」 永代供養墓とは何なのか

永代供養墓とは何か?

 近頃増えている「永代供養墓」。あるお坊さんは「居場所のなくなったかわいそうな遺骨を救済する場所」と呼んだが、果たしてどんな存在なのか。ノンフィクションライター・井上理津子氏がレポートする。

 * * *
 近年急激に増えた「自動搬送式」「仏壇型」「ロッカー式」など新しいスタイルの室内墓を訪ねてきたが、どこのお寺にも「永代供養墓」なるものが併設されていた。当初、意味がわからなかった。

「合祀墓」「合葬墓」「合同墓」など、お寺によって呼び方もまちまち。大きな岩がその墓標で、裏側や下部のスペースに遺骨をバラで入れるカロート(納骨スペース)があると案内されることが多かったが、「ここです」と示された場所に仏様が安置されていて、首をかしげたこともあった。仏様の足元の床下にカロートがあり、骨壷か袋に入れた遺骨を入れる。仏様に見守られる形だという。こう説明された。

「室内墓を契約いただくと、永代供養墓もご利用いただけます。万が一のときも安心です」

 一家に遺骨が増えて、使用しているお墓が満杯になったときや、改葬で何人もの遺骨を持ってきたが入りきれないときなどに、「古い遺骨」を入れるケースが多いという。使用していたお墓の管理料の支払いが滞り、そのお墓を取り壊すことになったときにも遺骨が移されるらしい。つまるところ、言葉は悪いが「不要になった骨を引き受けます」というところだと理解した。

 永代供養墓とは本来、「継承を前提としないお墓」を指すという。お墓を継ぐ人が途絶えても、お寺が続く限り、文字どおり「永代にわたって供養される」というお墓だ。

 終活の雑誌などを見ると、「納骨堂」「合葬墓」などと並列して紹介されている。しかし、「納骨堂」は広く室内墓のこと、「合葬墓」は一家、夫婦、個人の単位ではなく、複数以上の遺骨を合わせて入れるお墓のことだから、永代供養墓はそれらと同義語なのか。

「イコールではないが、違いますとも言えません。永代供養墓は契約上の概念であって、形を表すものではありません」と、葬送ジャーナリストの塚本優さんが教えてくれた。つまり、お寺と使用者が「永代にわたる供養」の契約を結ぶお墓のこと。だから、形も大きさも普通のお墓と変わらないもの、樹木葬の形式のものもあり、そのスタイルはさまざまだという。

「わざわざアピールしないが、心ある寺には、檀家が墓を継ぐ代が途絶えた際に、その家の墓から遺骨を移して合葬する墓が昔からあった。言い変えれば『居場所のなくなったかわいそうな遺骨』を捨てずに救済する場所。収益性ゼロなので、寺にとっては、ありがたいものではない」と東海地方に住むお坊さんは辛口だった。昔からある、そのタイプのものは「総廟」「無縁墓」「三界萬霊塔」などとも呼ばれてきたらしい。近年増えた永代供養墓は、その進化系だとの声も聞くが、いや、そうとも言い切れない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン