近頃増えている「永代供養墓」。あるお坊さんは「居場所のなくなったかわいそうな遺骨を救済する場所」と呼んだが、果たしてどんな存在なのか。ノンフィクションライター・井上理津子氏がレポートする。
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近年急激に増えた「自動搬送式」「仏壇型」「ロッカー式」など新しいスタイルの室内墓を訪ねてきたが、どこのお寺にも「永代供養墓」なるものが併設されていた。当初、意味がわからなかった。
「合祀墓」「合葬墓」「合同墓」など、お寺によって呼び方もまちまち。大きな岩がその墓標で、裏側や下部のスペースに遺骨をバラで入れるカロート(納骨スペース)があると案内されることが多かったが、「ここです」と示された場所に仏様が安置されていて、首をかしげたこともあった。仏様の足元の床下にカロートがあり、骨壷か袋に入れた遺骨を入れる。仏様に見守られる形だという。こう説明された。
「室内墓を契約いただくと、永代供養墓もご利用いただけます。万が一のときも安心です」
一家に遺骨が増えて、使用しているお墓が満杯になったときや、改葬で何人もの遺骨を持ってきたが入りきれないときなどに、「古い遺骨」を入れるケースが多いという。使用していたお墓の管理料の支払いが滞り、そのお墓を取り壊すことになったときにも遺骨が移されるらしい。つまるところ、言葉は悪いが「不要になった骨を引き受けます」というところだと理解した。
永代供養墓とは本来、「継承を前提としないお墓」を指すという。お墓を継ぐ人が途絶えても、お寺が続く限り、文字どおり「永代にわたって供養される」というお墓だ。
終活の雑誌などを見ると、「納骨堂」「合葬墓」などと並列して紹介されている。しかし、「納骨堂」は広く室内墓のこと、「合葬墓」は一家、夫婦、個人の単位ではなく、複数以上の遺骨を合わせて入れるお墓のことだから、永代供養墓はそれらと同義語なのか。
「イコールではないが、違いますとも言えません。永代供養墓は契約上の概念であって、形を表すものではありません」と、葬送ジャーナリストの塚本優さんが教えてくれた。つまり、お寺と使用者が「永代にわたる供養」の契約を結ぶお墓のこと。だから、形も大きさも普通のお墓と変わらないもの、樹木葬の形式のものもあり、そのスタイルはさまざまだという。
「わざわざアピールしないが、心ある寺には、檀家が墓を継ぐ代が途絶えた際に、その家の墓から遺骨を移して合葬する墓が昔からあった。言い変えれば『居場所のなくなったかわいそうな遺骨』を捨てずに救済する場所。収益性ゼロなので、寺にとっては、ありがたいものではない」と東海地方に住むお坊さんは辛口だった。昔からある、そのタイプのものは「総廟」「無縁墓」「三界萬霊塔」などとも呼ばれてきたらしい。近年増えた永代供養墓は、その進化系だとの声も聞くが、いや、そうとも言い切れない。