不倫の蔓延は海の向こうでも変わらない。経済成長著しい中国の場合、とある業者が異例の成長を遂げていた。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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習近平国家主席の下で徹底的に進められた反腐敗キャンペーン。これにより官僚の収入は激減し、官僚の間に蔓延していた「二奶(愛人)現象」も一段落したと考えられてきた。
しかし、中国で愛人を囲うことのできるのは、いまや官僚たちだけではない。全体的に所得が上昇した中国では、海外旅行で“爆買い”できる人々が増えるように、愛人に絡んだトラブルが社会の中で大きな問題となってきているのだ。
そんななか、乱れた中国社会の傾向を象徴するような現象がビジネス界を騒がせているという。なんと、正妻に頼まれて愛人を撃退する企業の業績が倍々ゲームで伸びているというのである。
それを詳しく報じたのは『財経ネット』(2017年3月11日)である。タイトルは、〈不倫の背後に大きなビジネスチャンス 愛人退治の専門企業が年商1千万元(1億6500万円)以上を売り上げる〉である。
この背景には、中国における離婚の数が高まっていることが指摘される。
愛人撃退ビジネスの核心部分は、婚姻を守るという点にあり、依頼は男女からともにあるという。愛人からの攻撃をかわしながら、できるだけ穏便に別れを演出する。その報酬は、高いもので20万元(約330万円)以上にもなるという。
まるで、交通事故を起こしたときの保険会社のようにも聞こえるが、別れが金で解決できるのであれば、かえってこうした風潮は助長されるのではないだろうか。