《築地を移転するなんて、ノートルダム大聖堂をパリからリヨンに移すのと同じくらいバカげています》。シャネル日本法人社長、リシャール・コラス氏(63才)の提言が話題になっている。5月16日、『東洋経済オンライン』に『シャネル社長が「豊洲移転」に異議唱える理由』という記事が掲載された。2016年11月の豊洲移転延期決定から6か月、小池百合子都知事(64才)も判断しかねるこの問題に大きな一石を投じている。
世界中のセレブを虜にするハイブランドを手掛けるコラス氏が築地移転反対の声を上げた理由は、「築地は日本にとって『ブランド』だから」。
《銀座のアイデンティティはまさしく築地のような場所と、シャネルのビルや、歌舞伎座のような場所との間にある「緊張関係」によって生まれているのです。築地のように、銀座を銀座たらしめている場所がなくなってしまったら、どうなってしまうでしょう》
《また、築地には多くの日本的な価値があります。築地は日本という国を最高の形で、なおかつ「生」で見せることができる場所なのです。技術、品質へのこだわり、伝統、人々の絆、味覚、美学──そうしたものがあそこには詰まっているのです》(『東洋経済オンライン』より)
そう主張するコラス氏は在日歴40年以上。フランス人の中でもとりわけ親日家で知られる。自宅は鎌倉。500坪の広い敷地に重厚な門構えのある伝統的な日本家屋だという。
「引っ越した当初は『窓の桟ひとつとっても、日本の職人技は素晴らしい』と感動していました。5本指ソックスと下駄を愛用していて『下駄の音や障子や襖を開ける時のスーッという音が好き』なんだそうです」(コラス氏の知人)
日本語も流暢で、奥さんも日本人。
「夫婦仲がすごくよくて、銀座で奥さんとほろ酔い姿を見たことがあります(笑い)。兜をかぶった写真をオフィスに飾るなど日本の伝統への愛も感じます」(シャネル関係者)
とりわけ銀座への思いは強い。先月オープンしたギンザシックスも、当初の広大な施設を作る計画には反対していたし、2004年12月シャネル銀座ビルが完成した時にも、
「銀座という街は300年以上もの歴史があるんです。銀座をパリ風とかニューヨーク風にしたらどうかという意見もあるけど、似合わない」
と発言し、銀座の景観を守ってきた。それだけにコラス氏の発言は重みを増し、築地で働く人々も賛同の声を上げている。
48年間マグロ仲卸業を営んできた『小峰屋』の和知幹夫さんもその1人。
「日本の中心で交通の便もよく海に近い銀座という場所にあるから、築地市場はここまで発展してきたんです。だから、よく言ってくださった、という気持ちです」
シャネルというブランドは知っていても、こんなにも日本を愛するシャネル社長がいたとは…。思わぬ人からの「ノン!」にマダム小池はどう出る?
※女性セブン2017年6月8日号