「おいら、今でこそ工場長だけどよ、ちょっと前までこのあたりのシマを仕切ってるボス猫だったんだぜ。その証拠に、ほら見てみな、名誉の負傷痕がガッツリあるだろう?」
工場長――これは彼の肩書きであり、呼び名でもある。ちなみに彼は4代目で、最強の工場長と呼ばれていた3代目亡き後、スカウトされたのだという。
「うちは金属加工工場でさ、従業員はヘヴィメタル好きの社長を入れて4人。おいらが見てないとすぐサボるから困ったもんだぜ」
イワキ精工の工場長になる条件は、
「誰が来ても動じない、機械音に驚かない、機械の間にもぐりこまない、機械にかけションしない。おいら、完ペキだぜ」
とのことだが、ボス猫時代は工場周辺にかけションしまくっていたらしい。
「だってテリトリーを主張しとかないといけないからな。今は工場全部がテリトリーだから…安心なんだよ」
と、いかつい顔をほころばせる工場長。そう、転職(?)と同時に彼は、穏やかな飼い猫となったのだ。
「それでもサボってる従業員にガン飛ばすと気合いが入るし、まぁ、昔取った杵柄ってやつだな」
機械音が響く中、元ボス猫の工場長は社長に抱かれて幸せそうに喉を鳴らした。
【プロフィール】
名前:工場長 ♂
年齢:5歳(推定)
種類:猫
勤務先:イワキ精工
職種:工場長
主な仕事内容:工場で働いている人間の仕事ぶりの監視。
お給料:猫用オヤツの“CIAO ちゅ~る”。通常は1日1本だが、頑張った日は2本になる。
好きなこと:社長と一緒の布団で寝ること。
嫌いなこと:オス猫の大事な部分を触られること。
現在の悩み:かつての縄張りを見回れないこと。“CIAO ちゅ~る”を腹いっぱい食べられないこと。
将来の夢:全国制覇!!
撮影■山口規子
※女性セブン2017年6月8日号