度重なるミサイル発射により脅威が高まっているといわれる北朝鮮。現在、米国は空母「ロナルド・レーガン」と「カール・ビンソン」を、朝鮮半島近海を含む西太平洋へ展開しているが、新たに3隻目の空母「ニミッツ」が派遣されることになった。
“いよいよ米国が北朝鮮に先制攻撃を加える準備に入った”との見方も出る中、朝鮮半島問題研究家で近著に『北朝鮮恐るべき特殊機関』がある宮田敦司氏は、「心理戦の一環」として、その可能性を否定する。
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すでに朝鮮半島近海へ派遣されている「カール・ビンソン」と同じ米海軍第3艦隊(カリフォルニア州サンディエゴ)の空母「ニミッツ」が、6か月の予定で西太平洋へ派遣されることになった。
同時期に3隻の空母が西太平洋に展開するという異例の事態となるわけだが、「カール・ビンソン」がこのまま朝鮮半島近海に留まることはないだろう。
「カール・ビンソン」はサンディエゴを今年の1月5日に出港しているわけだが、空母の展開は約6か月、このうち連続する作戦航海は最大90日といわれているからだ。
本来なら「カール・ビンソン」は、3月の米韓合同演習終了後にオーストラリアで乗組員を休養させている時期なのだが、シンガポール出港後の4月8日になって朝鮮半島近海へと目的地を変更している。このため、「ニミッツ」は「カール・ビンソン」の交代という形になる可能性が高い。
3隻目の空母派遣により、米朝間の緊張状態が再び高まるという見方があるが、現在、青森県三沢と韓国群山の米空軍基地の滑走路が改修工事のため閉鎖されている。このため、三沢基地のF-16戦闘機はアラスカと群山へ移駐していたのだが、群山でも滑走路工事が開始されたため、再び岩国基地など他の基地へ移駐している。工事は昨年から予定されていたものだが、米朝関係が緊迫する時期に改修工事を行うだろうか?
◆B-1B戦略爆撃機派遣の意味
トランプ政権は北朝鮮へ常に強力な圧力を加えているわけではない。例えば、今年3月以降に行われている米空軍B-1B超音速戦略爆撃機の韓国上空への派遣である。一見すると、B-1Bの派遣は大きな圧力となっているように思えるが、そうとは言い切れない部分がある。
B-1Bは、B-52やB-2戦略爆撃機のように核兵器を搭載することが出来ない。ロシアとの「第二次戦略兵器削減条約(STARTII)」により、核兵器の搭載能力が取り外されたからである。
米空軍が最新鋭のステルス爆撃機であるB-2や、多くの核兵器を搭載可能なB-52ではなく、あえてB-1Bを派遣したのは、北朝鮮を過度に刺激しないよう配慮した可能性がある。さらにいえば、B-1Bの派遣は「核攻撃は行わない」というメッセージとも解釈できる。
なお、米空軍は2017年1月30日、グアムのアンダーセン空軍基地に3週間展開したB-2戦略爆撃機3機が、米本土のホワイトマン空軍基地に帰還したと発表している。つまり、B-2を再度グアムへ展開して韓国上空へ派遣することも可能なのだが、それをしていないのだ。