バブル期に女性たちの間で爆発的に流行したのが、水着の股の部分に鋭く切れ込みが入った「ハイレグ」だ。
1976年のモントリオールオリンピックで史上初の10点満点を叩き出し、金メダルに輝いた体操選手、ナディア・コマネチ。「コマネチ!」といいながら股間の切れ込みを表現するビートたけし氏の有名なギャグも手伝って、日本ではコマネチ=ハイレグと連想する人は少なくない。だが改めて当時の写真を見ると、意外にもそこまで切れ込みが深くないことがわかる。女性用水着販売大手、株式会社Ai(旧・三愛)の取締役・丸田隆司氏が語る。
「レオタードと水着の違いはありますが、これはハイレグではありません。しかし同時期に流行した水着の資料と見比べてみると、確かに当時としては切れ込みが深いといえます。今の時代ではハイレグとはいえないですが、当時の基準で考えると若干深かった。そのため、驚きをもって人々の印象に残っているのではないでしょうか」
ちなみにハイレグの定義からいえば、どれだけ切れ込みが鋭くても、セパレートタイプの水着は業界ではハイレグとは呼ばなかった。しかしバブル期を知らない若い世代にとっては、セパレートタイプの水着が主流になり、ビキニであっても切れ込みの深い水着はハイレグという捉え方に変化してきている。
女性ファッション水着の世界は、切れ込みのように深い。
※週刊ポスト2017年6月9日号