安倍晋三・政権になって、テレビのワイドショーに出演するコメンテーターの解説が従来とは大きく変わった。
時事通信社の田崎史郎・特別解説委員をはじめ、安倍首相との会食に招かれる評論家が、「官邸はこう考えている」とテレビで政権スポークスマンのような発言をし、官邸にとっての「空気の伝道師」の役割を果たしている。ジャーナリズム論の水島宏明・上智大学新聞学科教授は言う。
「テレビは面白くなければ見てもらえない。原発政策とか、安保法制、共謀罪など大きなテーマで記者の難しい解説を聞かされるより、スキャンダルの方が面白い。それも、誰とはいいませんが、『安倍さんもこういうところは苦労しているんだ』とか、『昭恵夫人は困っている』といった人間ドラマが見え隠れするような秘話を求めている。理屈を求めないから、官邸の内部事情を知っている人がコメンテーターに呼ばれる」
その根底にあるのは、視聴者の意識の変化だという。
「メディア論の研究者から見ると、一番変わったのは視聴者です。昔は、メディアには権力監視の役割があり、政権に批判的な報道は当然という考え方が常識としてあった。
今ではそれが崩れている。とくに若い世代は、安倍さんを攻撃しているように見える報道には嫌悪感を感じる傾向があります。政権に批判的な従来型のジャーナリズムのスタイルでやってきたコメンテーターは、実際には官邸の圧力など関係なく次第に姿を消している」(同前)
かくしてテレビは、安倍官邸の「伝道」に協力するしかなくなった。
※週刊ポスト2017年6月16日号