食事に気を使っているつもりでも、栄養バランスが悪く、ビタミンやミネラルが不足している人が多いと、『その調理、9割の栄養捨ててます!』(世界文化社)の監修をしている東京慈恵会医科大学付属病院栄養部課長の濱裕宣さんは言う。
「主食のご飯と、主菜の肉や魚は食べていても、副菜を食べていない人が多いんです。それに、糖質やたんぱく質、脂質が中心で、野菜の摂取が足りておらず、日本人の7割が野菜不足だといわれています。野菜を摂らないからビタミンやミネラルが摂れず、栄養失調状態となり、体の不調を引き起こしているんです」(濱さん・以下同)
栄養不足は、摂取する絶対量の不足に加え、野菜に含まれる栄養素が昔より減少していることも一因だ。大量生産によって土壌のミネラルが減り、品種改良が進んだことで、野菜に含まれる栄養素も変化している。昔に比べて野菜らしいクセがなくなり食べやすくなったものの、栄養価が下がってしまっているのは、何とも残念だ。
例えばほうれん草でいうと、1950年に比べて、2015年やビタミンCはほぼ3分の1、鉄分は6分の1までに減少している(※「日本食品標準成分表」の「1950年初訂」と、「2015年版(七訂)」による比較・以下同)。その他にも、にんじんのビタミンAは4050μgから720μg、キャベツのビタミンCは80mgから41mg、アスパラガスのビタミンB2は0.3mgから0.15mgに減少した。
野菜に含まれるほとんどの栄養素は、収穫した時点からどんどん減少していく。切り方や保存方法でも減少は加速するため、栄養ロスが9割を超えることも少なくない。とはいえ、ロスを見越して何倍もの野菜を食べるのは現実的でない。