中国政府は、景気を下支えするために新たな減税策を決定した。減税規模は約6兆円に達し、これに伴い財政赤字が3兆円も拡大するとされる。中国経済の実態はかなり怪しくなっていると見られるが、悲劇的な「チャイナショック」はあり得るのか?
大前研一氏は独自の視点から「中国経済インプロージョン(圧壊=内側に向かっての爆発)の激震に備えるべき」と警鐘を鳴らす。
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FBI(連邦捜査局)のジェームズ・コミー長官の首を切ったことをきっかけに、ドナルド・トランプ大統領の首もにわかに怪しくなってきた。したがって世界経済もまた乱気流に放り込まれる危険性があるが、それとは切り離した事象として、このところ中国経済の行く手に暗雲が垂れ込めている。
たとえば、中国の景気の先行指標とされる製造業の購買担当者景況指数(PMI)が4月に2016年9月以来7か月ぶりの低水準(50.3)となり、中国経済が下降トレンドに入るという見方が広がった。財務省の浅川雅嗣財務官は「中国経済の減速がグローバル経済にとって引き続き大きなリスクだ」と警戒を強めている。
だが、今後の中国経済はマクロ経済指標の動きとは異なる観点から、大きな影響を受ける可能性が高い。それはアメリカのトランプ大統領が中国の習近平国家主席に4月の首脳会談で突き付けた「三つの要求」だ。