初夏に旬を迎える「じゃがいも」は、馬鈴薯ともいう。原産地は南米アンデスの高地。16世紀末にスペイン人やイギリス人によってヨーロッパに伝わったとされる。日本への伝来は慶長3年(1598年)。ジャワ島の港・ジャガタラ(現在のジャカルタ)からオランダ人が長崎へ持ち込んだため、「じゃがたらいも」の名がつき、その後“じゃがいも”になったとされる。
のちに北海道へ苗が移植され、明治7年(1874年)、開拓使によってアメリカの優良種が輸入され栽培が本格化した。北海道産の「男爵いも」は、当時、農場主で量産仕掛け人の川田龍吉男爵にちなんでの命名である。ちなみに「メークイン (May Queen)」はイギリス原産のじゃがいもで、大正時代にアメリカを経由して伝来した。
意外なことに、じゃがいもはほうれん草やミカンに匹敵するほど豊富なビタミンを含む。しかも、でんぷんに守られて加熱しても壊れにくい。また、塩分を排出する働きのあるカリウム、アルコールを分解する働きのあるナイアシンも含有する。
ただし、じゃがいもの芽や、緑色をした皮部分には要注意。有毒物質・ポテトグリコアルカロイドが含まれており、一定量を摂取すると頭痛や腹痛、嘔吐などを引き起こす。しっかり除去してから調理すること。
家庭料理研究家の松田美智子さんは、じゃがいもについてこう話す。
「子供の頃、新じゃがが出回り始めると、週末の朝食に必ず登場していたのがじゃがいも。みずみずしく、サクサクとした新じゃがの歯ざわりはまさに初夏の味。シンプルな炒めものでよし、パンケーキにすれば、腹持ちのよいブランチにも」
◆じゃがいもの選び方
日本で流通している主な品種は「男爵」と「メークイン」。男爵いもは粘りがないので、加熱するとホクホクする半面煮崩れしやすく、粉ふきいもやポテトサラダ向き。一方、メークインは粘りがあり、煮崩れしにくいので、おでんの具材や煮もの、揚げ物にぴったり。近年は品種改良も進み、上品な甘みと口当たりの「キタアカリ」など、新種も登場している。
じゃがいもを選ぶポイントはまず、芽が出始めていないか、皮が薄く緑がかっていないかをチェック。しっかりと実が硬く、メークインは表面の皮がつるりと明るいものを選ぶ。新じゃがの場合は、皮が手でむけるくらい薄いものがベスト。
◆『ポテトパンケーキ』のレシピ
【1】男爵いも中2個は皮をむき、1カップ分すりおろす。玉ねぎ1/4個もすりおろして男爵いもと合わせ、溶き卵1/2個分、薄力粉大さじ2を加えて軽く混ぜて30分休ませる。
【2】直径16cmぐらいのフライパンにオリーブ油大さじ1を引いて中火で温める。【1】をお玉ですくってフライパンにそっと流し入れ、直径約10cmの円形に広げる。
【3】蓋をして弱火に落とし、表面に小さな気泡が出てきたら上下を返す。再び蓋をして、フライパンを揺するとパンケーキが動くようになるまで焼き、器に移す。熱いうちにサワークリーム、パルメザンチーズ、白こしょう、ディル各少量をあしらう。
撮影/鍋島徳恭
※女性セブン2017年6月29日・7月6日号