お墓に「誰と入るか」、もう決めていますか。夫や夫の両親とは、嫌という人も最近では多い。さらに最近では独り身で、一緒に入る家族がいないケースもある。今回は、ノンフィクションライターの井上理津子氏が女性だけの共同墓について迫った。訪れたのは、東京都府中市の「府中ふれあいパーク」内にある「女性のための共同墓」だ。
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こちらは2000年にNPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク(東京都新宿区)が建てたもので、もう17年の歴史を刻んでいる。
訪れて、やはりその美しさに目を見張った。そもそも府中ふれあいパークは、噴水や蔓棚、フェンスなども配され、色鮮やかなバラの花々が咲きこぼれる、ヨーロッパの庭園さながらの霊園だ。「女性のための共同墓」は、その一角の5m×2.5mほどの区画。白い石のしゃれたベンチと、赤や白のベゴニア、名前と生年月日(故人は没年月日も)を刻んだクリスタル・プレートに囲まれた 直径80cmの円形のお墓である。
遺骨は、霊園が用意した小さな骨壷に移され、お墓の中の納骨スペースへ安置される。その骨壷に入りきれない遺骨は、納骨スペースの中に合葬される仕組みだ。お墓の上のガラスの蓋に、こう刻まれている。
〈個を生きる女性たち、ここに集う〉
どういう意味なのか。SSSネットワーク代表で、『70歳、だから何なの』の著者、松原惇子さん(70才)はこう話す。
「結婚していようが、していまいが、誰しもは『ひとり』でしょう? ずっとシングルの人も、離婚した人も、結婚していて精神的に自立している人も『個』を生きているってこと。
SSSネットワークの3つのSは『シングル』『スマイル』『シニアライフ』の頭文字です。20年前から『ひとり』『個』で生きる女性たち、ネットワークをつくって楽しく生きようよ、と活動してきたんです。ですから、『女たちの共同墓』は、そんな仲間つまり“墓友”たちが集う場所なんですね」