「僕は7歳の時に母が爆死して、父親にも何も教わっていないからでしょうね。別に神を信じるとかじゃなく、神=真実、聖書=真理の法則が書かれたハウツー本として読んでいる。現に嘘をつかないと幸せに近づける気がする。聖書でいうパラダイスは特別なものではなく、人と人の関係にふっと出現する状態を言うんだと思う。
つまり自分の嘘に傷つき、自意識という悪魔の乗物に縛られてもいた僕は、彼女と結婚してそう変わった。男はブレたらダメだと言う人もいるだろうけど、いいんです。ブレてもいいんです、よく変われば。人間は幾らでもいい方向に変われるし、人を愛するのは自分のため、人間は1人では幸せになれないという大発見もできるんです」
ちなみに本書にはバツ4ならぬ〈マル五〉の作家・高橋源一郎氏や、過去に夫以外の恋人がいたという写真家・植本一子氏との対談も収録され、知り得た真実も人それぞれだ。しかし結婚が他者を丸ごと受け入れ、自意識の呪縛を離れるための格好の経験であることは間違いなく、やはりそんな結婚にこそ私たちは近づきたい。人間を生きるためにも。
【プロフィール】すえい・あきら/1948年岡山生まれ。県立備前高校機械科卒業後、工員、キャバレーの看板書き、イラストレーター等を経て、白夜書房の前身・セルフ出版設立に参加。『写真時代』『パチンコ必勝ガイド』等、数々の伝説的雑誌を手がけ、2012年、取締役編集局長を辞し退社。2014年『自殺』で第30回講談社エッセイ賞。著書に『素敵なダイナマイトスキャンダル』(映画化決定)『絶対毎日スエイ日記』『末井昭のダイナマイト人生相談』等。179cm、75kg、O型。
■撮影/喜多村みか ■構成/橋本紀子
※週刊ポスト2017年6月30日号