【著者に訊け】末井昭氏/『結婚』/平凡社/1400円+税
きっかけは女装専門誌で女装姿を撮られたこと。末井昭氏はそうこうして写真家・神藏美子(かみくらよしこ)氏と恋に落ち、1998年に再婚した。当時、彼女は評論家・坪内祐三氏と婚姻関係にあり、波乱の末の『結婚』だった。
前作『自殺』(講談社エッセイ賞)では隣家の青年とダイナマイト心中を図った母親の死を。続く本書でも自身の離婚や再婚を美化も正当化もせずに綴った氏は、依頼を受けた当初、〈読んだら絶対結婚したくなくなる本〉なら書きたいと思ったという。〈安易に結婚しても、うまくいってない夫婦が多いように思ったからです〉
しかし「神が合わせ給いしもの」として互いの中に自分を見る唯一無二の関係を築こうとする2人の姿は、著者の意図に反しこんな結婚のあり方もいいなと思わせる。〈楽しいけどしんどい、ツラいけどおもしろい〉結婚という人間関係の本質に迫る。
まずは最初の結婚から。工員の傍らデザイン学校に通い、キャバレーの看板を手がけるようになった彼は、同じ下宿の1つ年上の女性と21歳で結婚。だが関係はいつしか冷め、白夜書房の名物編集長となってからも3人の愛人の間を渡り歩き、ギャンブルや不動産投機等で3億もの借金を抱えた。そんな中で出会ったのが「イエスの方舟」の主宰者、故・千石剛賢氏だった。