京都は古来から天皇の御座所であり、平安遷都(794年)から明治維新(1868年)までの約1000年の間、代々の天皇は京都で国と国民の安寧を祈り続けてきた。京都御所には明治天皇が一時期生活していた若宮・姫宮御殿もある。
宮中祭祀に詳しい国際日本文化研究センターの山折哲雄・名誉教授はこう話す。
「京都には幾多の動乱を乗り越え、各時代を象徴する遺跡や伝承が残されている。退位後にその歴史ある土地に戻るのは自然な流れではないでしょうか」
それでも天皇・皇后の退位後の住まいが東宮御所になる背景にはこんな事情があるようだ。
「天皇陛下は新天皇や皇后に気を遣わせぬよう『近くに居ない方がいい』というご意向を持っていたといわれます。一方、美智子さまは慣れ親しんだ東京を望まれたのではないでしょうか。しばしば皇居に“里帰り”する娘の黒田清子さんから遠くなってしまうという事情も考慮されたのかもしれません」(宮内庁関係者)
去る4月、天皇の学友である明石元紹氏に皇后から電話がかかってきたという。