1969年から続く『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』(TBSラジオ)のパーソナリティーを務める毒蝮三太夫(81才)。楽しくて役に立つラジオの魅力をずっと伝え続けてきた重鎮ながら、その功績については「おれもさぁ、こんなに長く続くとは思ってなかったよ」と、ガハハと笑い飛ばす。
生放送スタイルの同番組では毎回、毒蝮が街へ出かけ、東京の下町仕込みの『ジジイ、ババア』トークで人々と交流。その軽妙なかけあいに根強いファンがつく。
「あと2年で番組開始から50年だっていうけど、やれるかわからないよ。おれが病気したり、スキャンダルになったら終わりだよ?(笑い)ラジオだってメディアが多様化している世の中で先細りだしさ。でもだからこそ、ラジオは“伝達するメディア”として確固たる信念を持ってやっていかないといけないよな」(毒蝮)
相手に伝わらない言葉はただの“ノイズ”と断じる毒蝮。例の“ババア発言”にも、毒蝮流のルールがある。
「おれが“くたばり損ないの、ジジイ、ババア”と言ったって、けんかを売ってるんじゃないんだから。相手に笑って受け入れてもらうためには、敵じゃないということを見せることだよね。まずこっちから胸襟を開いて、笑顔で語りかける。そうすりゃ、相手も胸襟を開いてしゃべってくれますよ。だからって、おれは無理してやってるんじゃないよ。素直に本音でしゃべる。じゃないと、伝わるわけがないよ」(毒蝮)
この“本音”は、現代を読み解くキーワードともなっている、そう語るのはTBSラジオの橋本吉史プロデューサーだ。
「『ニンゲン観察バラエティモニタリング』(TBS系)でも最近は、途中で気づかれたりした“失敗”をお蔵入りさせないで、そのまま流してますよね。そのドキュメンタリー的な感覚は、生放送でどんなハプニングが起こるかわからないラジオそのもの。マツコ・デラックスさん(43才)など毒舌系のタレントさんが支持されるのも、本音で語っているからでしょう。お約束の“不自然な演出”を取っ払って本音ベースの時代へと変わってきているんです」
本音を語る人にはつい真剣に耳を傾けたくなる。受信機の向こう側に、私たちがいちばん求めているのは“人間味”なのかもしれない。
実際、ラジオを聴くと最も人間らしい脳といえる「前頭前野」が活性化するというデータもある。前頭前野とは、創造性、やる気、実行能力、感情のコントロール、決断などと関係が深い部分で、いわば“人間力”を育むのに最も重要な部位といえる。前頭前野が発達しているからこそ、人間は人間らしい精神活動を可能にしているのだ。
人間味あふれる人の話を聴き、聴いている聴取者の人間力をもアップするラジオ。そうか、ラジオを聴くとあたたかい気持ちになるのはこんな理由があったのか。
※女性セブン2017年6月29日・7月6日号