アイドルである限り、恋愛も結婚も許されないことなのでしょうか? ライブの始まりに「私と恋をしましょう」と呼びかけることもある、地下アイドルでライターの姫乃たまさんが、アイドルとファンの関係性と、その幸せについて考えました。
* * *
6月17日に開催された第9回AKB48総選挙の場で、NMB48のメンバー須藤凜々花さん(20)が結婚発表をしました。これを聞いて私は改めて、地下アイドルとファンの関係性について考えるようになりました。この関係の幸せはどこにあるのでしょうか。
先日、ライブの終演後に物販を片付けていたら、突然ファンの男性から「結婚してほしい」と声をかけられました。私が地下アイドル活動を始めてすぐの頃から応援してくれているので、彼とはかれこれ7、8年の付き合いになります。女子高生だった私もいつの間にか24歳になって、30代だった彼も40代になっていました。突然の言葉に驚きましたが、話をすると、それはプロポーズの言葉ではありませんでした。
「結婚してほしい」の後に、「僕は結婚を諦めている」と彼は続けました。矛盾しているわけではありません。「僕はファンになったことで人生がすごく豊かになったから、たまちゃんが結婚することで、その先の幸せを見せてほしい」と、彼は言うのです。好きな人の幸せで自分も幸せになるというのは、人として出来すぎていて、私にはまだ完全に理解することができません。
地下アイドルとファンの関係性は、どのようにあれば幸せなのか、ずっと考えています。それは地下アイドルが、歌や踊りの技術でも、完璧な美しさでもなく、「なんかいいな」と思ってもらう仕事だからです。人の幸せについて考えるなんて曖昧なようですが、そもそも地下アイドルの魅力とされているものが曖昧なので仕方ありません。ファンが何をいいと思っているかは、それぞれなのです。そして、なかなかこれといった正解に辿り着きません。
私はこれまで、地下アイドルとファンの関係は、ファンになったことですでに成就していると考えてきました。地下アイドルとファンの間には、日常の人間関係と同じように信頼があって、どちらかがどちらかを一方的に消費しているわけではありません。地下アイドルが一方的に歌っているわけでも、ファンが一方的に見ているわけでもないのです。ファンに応援されているから一生懸命歌う、歌っているから精一杯応援するという風に、お互いが相手を認め合う関係になっています。