小説に挿絵があるように、年若い少女だった岡上淑子のフォト・コラージュが示され、その挿文として物語が触発される。
小説第二話「呼び声、もしくはサンザシ」では、句点がなくえんえんと四ページつづき、五ページ三行目にようやくマルがつく。読む者が息をつくことを許されない、野蛮な官能と恍惚が渾然一体となった愛の世界。いま流行のライトノベルの対極にある小説である。小説とエッセイのコラージュでもある。
スタンダールの小説『カストロの尼』は、イタリアにあるカストロ修道院の尼エーレナの恋愛譚だが、それを『カストロの尻』と意図的に誤記する悪だくみが読みどころ。さて「カストロの尻」の正体とは何であるのか。
※週刊ポスト2017年7月7日号