世界が驚いた中国人のマナーだが、意識は変化しているようだ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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中国人観光客の数は相変わらずだが、彼らのトレードマークの“爆買い”は影を潜めたようだ。例のマナー問題も一段落したようにも思われる。
実は、道路に好き勝手に痰を吐くなどといった迷惑行為は、いまや中国国内でも非難と軽蔑の対象となっていて、各地で文化摩擦的なトラブルにもなっているのだ。そうした事情を象徴するようなニュースを報じたのが、5月10日付『海峡都市報』である。
タイトルは、〈道で好き勝手に痰を吐く者を撮影した男性がその仲間に殴打される事件が発生 約10分間も殴打が続いたのに誰一人助ける者なし〉である。
被害に遭ったのは福州市で保険会社に勤める翁さん(29)だ。彼は日ごろからマナーの悪い行為を見るとスマートフォンで撮影し、メディアに送ったり動画サイトで映像をさらすなどしていたという。
ある日、翁さんは仕事の帰り道、ビルの付近で道端に座り将棋をしている男性が、自分の周りに痰を吐き散らし、ゴミもポンと投げ捨てている行為に接し、早速、スマホを取り出して撮影補始めた。
ところがこのとき男性の仲間が翁さんの行為に気付き、彼を取り囲んだ。翁さんに撮影した画像を削除しろと命じ、それを拒否したところ仲間が襲い掛かってきたという。
最終的に暴行は10分間も続いたというが、勇ましいのは翁さんも最後まで抵抗し、スマホの画像を守ったということだ。翁さんが間もなく警察に駆け込み事件が発覚した。
興味深いのは、日本であればたとえ迷惑行為をした人物とはいえ勝手に動画を撮影してネットにアップすることは憚れそうだが、中国の弁護士(記事にコメントを寄せた)は、「街中での非文明的行為に対し、動画などの撮影で告発しようとする者に対しては法律的な保護があるべき」との見解を示している。
中国社会も急速に変わってきているようなのだ。