毎日1~2時間の寝不足が借金のように積み重なり、やがて“債務超過”に陥ると、がん、認知症などをはじめとする重大な疾病を発症させる恐れがある。それが「睡眠負債」だ。6月18日に放送された『NHKスペシャル』でも〈睡眠負債が危ない~“ちょっと寝不足”が命を縮める~〉と題してこの問題を大きく取り上げ、話題を呼んでいる。
睡眠負債の蓄積が体内に与える影響の一つにストレスホルモンの増加がある。脳神経科学などを専門とする枝川義邦・早稲田大学研究戦略センター教授が解説する。
「たとえば慢性的な睡眠不足によってコレチゾールと呼ばれるホルモンが多く分泌されるようになり、これは記憶を司る脳の海馬の働きを阻害します。また、睡眠中には脳内のアミロイドβと呼ばれる老廃物が排出されていきますが、睡眠不足が重なると排出がうまくいかずアルツハイマー型認知症の発症リスクが高まることがわかってきています」
アミロイドβについては、認知症が発症する10~20年前から脳内での蓄積が始まることが近年、明らかになってきている。若い頃の睡眠不足の積み重ねが、高齢になった時の認知症の一因となっている可能性があるわけだ。