妻や娘、恋人、あるいは女性の部下や上司の突然の“不機嫌”に戸惑ったことはないだろうか? 些細なことにキレる、謝った過去の非を蒸し返して責める──思いがけないところで女性の機嫌を損ねてしまう男性は多い。なぜ男性は地雷を踏むのか。その謎は脳科学でいとも簡単に紐解けると、『女の機嫌の直し方』(集英社)の著者で人工知能研究者、脳科学コメンテーターの黒川伊保子さんは語る。
男性脳と女性脳は「回路構成」と「信号特性」が違い、その女性脳という“装置”を理解すれば自在に対応できるという。なぜ男性は女性の機嫌を損ねてしまうのか、黒川さんに聞いた。【全2回・前編】
◆知っておきたい脳の使い方の違い
男性脳と女性脳は、その使い方が大きく異なる。ときに女性脳に近い脳を持つ男性がいればその逆もあるが、ここでは基本的な脳の性差のみに絞り、大きく3つのポイントを挙げて解説する。
1つは対話スタイルの違い。話の流れが真逆で、女性は事の発端から時系列で話したがるのに対し、男性は最初に目的や結論を知りたがる。そして感性が真逆でもある。女性脳の対話エンジンは「プロセス指向共感型」なのに対し、男性は「ゴール指向問題解決型」なのだ。
「女性は経緯を話しながら、そこに潜む真実を探る演算を無意識に行っているので、話の腰を折られては、演算が中断されて無に帰してしまうのです。このため、不快感が絶頂に達し、“話を聞いてくれない”と責められることになるのです。男性は“女は最初から答えは決まってるんだよね”なんて言いますが、結論が決まっているわけではなく、話しながら、答えが見つかっていく特性を持つのです。
一方、男性は一般的に問題解決のために対話をします。優秀な脳ほど、素早く問題を解決しようとする“省エネ型”なのです。また、女性のストレス信号は共感で一掃されるため、共感によって上手に話を聞いてもらうと、思考の質も上がって話し終える頃にはきっぱりと結論が出るのです。ですから話の腰を折って問題解決しないこと、そして共感が大事なのです。公平性を重視し、何かを特別視しないのが男性脳ですが、女性脳の共感型対話エンジンに客観性発言は嫌われるので注意しましょう」(黒川さん、以下「」内同)
2つ目は視点の運び方(ビューセンサー)の違い。男性は遠くを広く見る俯瞰的な視点を持つのに対し、女性は近くを仔細に観察する近視眼的な視点を持つ。
男性は脳の前部から後部にかけて縦に深く使い、小脳が著しく活性化するため、空間認知力が高い。遠くから飛んでくるものに対し、身をかわしたり捕まえたり身体制御することに長けるが、女性のように身近な大切なものに終始心を向けることが難しい。