腸内に長寿菌(善玉菌の代表格である『ビフィズス菌』と、がん細胞の増殖を抑えて免疫力を上げる『酪酸産生菌』の総称)を増やし、いい便を作るには、野菜や海藻、豆類、きのこ類に豊富に含まれる食物繊維を摂ることが大切だと理化学研究所特別招聘研究員で腸内細菌の世界的権威である辨野義己さんは説明する。
「食物繊維は便の材料となる成分。腸内の老廃物や有害物質をからめ取って腸管を刺激し、便を肛門まで運ぶぜん動運動を促します。体内の不要物を便として外に出すと同時に、腸内で有害物質を増やす菌の増殖も防いでくれます」
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2010年)』によれば、日本人が1日あたりに必要な食物繊維の量は女性で18g、男性で20g。しかし、現代人の食物繊維量の摂取量は1日12~14gだ。
日本人女性の48%が便秘に悩まされており、その対策として、ヨーグルトを摂る人がいる。確かに、ヨーグルトは腸内を掃除してくれるが、そもそも、便の材料となる食物繊維を摂らなければ、便は作られない。つまり、腸の健康の主役は食物繊維で、発酵食品はサブ的な役割なのだ。
食物繊維で便を作り、ヨーグルト・乳酸菌飲料などの発酵食品でいい便に育てる。この順番を知らないと、本末転倒になる。さらに食物繊維には長寿菌を増やす役割もある。
「長寿菌の1つ、大便菌こと酪酸産生菌は、食物繊維を利用して酪酸を作るため、食物繊維を摂るほど長寿菌である大便菌が増え、よい環境作りに貢献します。実際、長寿菌が腸内細菌の6割を占める元気なお年寄りが多い地域では、野菜と海藻をたっぷり食べていました。
“長寿の島”として知られる鹿児島・徳之島を訪れ、80~90代の元気なお年寄りの便を調べたところ、検出された腸内細菌の約4~6割が長寿菌でした。そして、徳之島では、海藻のアオサの天ぷらやさつまいもを蒸したもの、昆布のみそ汁などがよく食べられていました」
食物繊維を効率よく摂るには、野菜はもちろん、海藻がよいとも続ける。というのも、日本人の腸内にいる腸内細菌の1種、プレビウス菌は、海藻の繊維を分解してエネルギーを取り出せるからだ。
この菌はほかの国の人々は持っておらず、海藻を食べてエネルギーを作れるのは日本人だけ。食物繊維も豊富なので食べない手はないのだ。
※女性セブン2017年7月13日号