愛犬が吐いてしまい、心配したという経験がある方は少なくない。いくら周りの愛犬家に「大丈夫だ」と言われても、やはり不安にはなるものだ。そんな悩みを抱えた神奈川県の女性から質問がきた。
「わが家の愛犬は56才のポメラニアン。食後によく吐くので、知人に相談したところ、“犬はよく吐くので問題ない”と。でも、あまりに頻度が多いので心配です。病気なのでしょうか?」
神奈川県・けーこ(56才・パート)
循環器が専門の白金高輪動物病院総院長・佐藤貴紀さんに、犬が吐く原因を教えてもらった。
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犬が吐くといっても“嘔吐”と“吐出”があります。
嘔吐は、胃や腸の内容物が食道を通って口から吐き出される状態をいい、吐く前に悪心などの前兆が見られます。食後しばらくしてから吐くことが多く、吐物は消化された食物や胃液などになります。
嘔吐の原因として最も多いのが胃腸炎です。その他、朝に多く見られる場合は、空腹時の胃酸過多の可能性がいちばん高く、その他に基礎疾患として、内臓疾患、内分泌疾患、中毒症状、感染症などが考えられます。
一方吐出は、食物が胃に入る前に逆流し、吐き出される状態をいい、悪心などの前兆は見られません。食後すぐ吐くことがほとんどで、吐物は未消化な食物や唾液など。吐出の原因としては、食道炎や、食道の機能が損なわれて食道が拡張する巨大食道症、または腫瘍や先天的異常などが考えられます。
嘔吐なのか吐出なのかの判断は、吐物の内容や吐いたタイミングである程度わかります。食後すぐに未消化の食物が出てきた場合は吐出を疑いましょう。吐き気で何度も飲み込むような仕草をする場合も吐出の可能性が高いです。それ以外は嘔吐になります。
嘔吐以外にどのような症状があるかで応急処置が変わります。飼い主は慌てずに状況を判断することが大切です。もし、食欲がない、元気がない場合は、緊急性を要しますので、すぐに病院へ。
嘔吐と一緒に起きる症状で最も多いのが、下痢です。この場合、成犬であれば、まずは食事を1回抜いてみましょう。その後も食事の量を減らし、軟らかく消化のよいものを少量ずつ、3~4回に分けて与えてください。
朝もしくは空腹時に吐く場合は、胃酸過多が考えられるため、食事の回数を増やしてみましょう。その他、嘔吐が慢性的に続く、吐物に血液が混じる、吐物の量が多いなどの場合は、早めに受診を。
下痢や軟便の場合は糞便検査も必要となりますので、受診の際は、便も一緒に持参すると検査がスムーズです。犬は確かによく吐きますが、病気の可能性もあるので、注意して観察をし、素人判断はせず、獣医師などの専門家に相談しましょう。
※女性セブン2017年7月13日号