デビューからの連勝記録は29でストップしたものの、前人未到の大記録を達成し、日本中に将棋ブームを巻き起こしている藤井聡太四段(14)。彼の学んだ数多の棋譜のなかには、棋界の“正史”には刻まれていない“異色の一局”があった──。
1981年5月31日。東京・千駄ヶ谷にある将棋会館で、その対局は行なわれた。“真剣師”と呼ばれた伝説のアマチュア棋士・小池重明と15世名人・大山康晴(当時は王将)の「プロ・アマ角落ち戦」である。
先月26日に史上初の29連勝を達成した藤井四段も、幼い頃からつけていた「将棋ノート」にこの一局の棋譜を書き記していたという。
藤井四段が5歳から通い始めた「ふみもと子供将棋教室」(愛知県瀬戸市)のオーナー・文本力雄氏が語る。
「棋界には、過去の棋譜の指し手を予想する『次の一手問題』という訓練があります。プロ同士の棋譜を教材にすることが多いですが、藤井君が小学校低学年の頃に、教室で小池重明と大山名人の対局を研究したのです。熱心に答えを書いたノートは、今も大切に持って見直しているようです」
小学校低学年にして伝説の対局から何かを学び取ろうとしていたというのだ。