戦後70年を過ぎ、戦争の記憶はますます遠ざかる。『永遠の0』で知られる作家・百田尚樹氏は、元日本軍エースパイロットたちの証言を集めた戦記ノンフィクション『撃墜王は生きている!』(井上和彦著、小学館文庫)の解説で、日本人の戦争観に疑問を呈している。
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著者の井上氏も書かれていますが、戦後の日本人は軍人に対するリスペクトというものを失くしてしまいました。
軍人というだけで、まるで犯罪者のように見る「進歩的文化人」や「左翼ジャーナリスト」が戦後のマスメディアを支配していたからです。今も、野党の国会議員の中には、自衛隊員を「人殺し」とか「暴力装置」と表現する人がいます。こんな国は他にありません。
他国においては、市民はおしなべて軍人に対する敬意を持っています。それは当然のことです。もし戦争となれば、彼らが命を懸けて自分たちを守ってくれるのですから。
たしかに「戦争」はよくない。それは当たり前のことです。しかし戦争を憎むことと、軍人を憎むことは全然違います。軍人の究極の目的は国を守ること、そして国民の命を守ることです。
この本には五人の元帝国陸海軍の戦闘機搭乗員の話が語られています。そのほとんどが本土防空戦の話です。第一章に登場する元陸軍の板垣政雄軍曹の言葉がいきなり私たちの胸を打ちます。彼はむざむざと東京空襲を許してしまった後に、こう言います。
「そりゃもう、ただ東京都民に申し訳がなくてね」
板垣氏は「空の要塞」と言われたB29に、戦闘機「飛燕」で二度も体当たりを敢行して、これを撃墜した搭乗員です。これはまさしく「対空特攻」です。幸いにして板垣氏は二度ともパラシュート脱出に成功しましたが、これは体当たりの衝撃で操縦席から投げ出された結果です。おそらく体当たりした時は死ぬ覚悟であったに違いありません。爆撃機B29による本土空襲から市民の命を守りたい、その一心からの行動です。