どうしたら多くの高齢者の夢、「在宅ひとり死」は叶えられるのか──社会学者・上野千鶴子さんが在宅医療の医師・小笠原文雄さんに67の質問をぶつけてベストセラーとなった『上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?』から4年。ますます在宅医療の必要性が増し、注目度も高まっている。上野さんは小笠原さんの新著『なんとめでたいご臨終』(小学館)をどう読んだのか。人生の最期を家で朗らかに過ごす方法を上野さんと小笠原さんが語り合った。
小笠原:ぼくがひとり暮らしの患者さんに接してびっくりしたのは、約8割の人は、ひとりでいることを望んでいたことです。逆に、寂しいから常に誰かにいてほしいと言う人は約1割、なるべくなら誰かにいてほしいと言う人が約1割。ということは、われわれ医療チームはもちろん、ご家族や周囲の人が、患者さんを「ひとりで放っておいてあげる勇気」を持たなきゃいけないんですよね。
上野:ひとりでいることがデフォルトになっている人は、ひとりでいることが平気なんです。
小笠原:平気という以上に、ひとりでいる方が、うれしいみたいです。
上野:大阪の辻川覚志さんというドクターが、独居高齢者の寂しさと不安調査をしておられます。得た結論が「おひとりさまは、寂しくも不安でもない」でした。「おひとりさまでお寂しいでしょう」というのは、大きなお世話、余計なお節介だと思います。
小笠原:在宅医療でひとり暮らしのかたを診るようになるまで、ぼくはそれがわからなかったんですよ。
上野:今日はぜひ伺おうと思っていたんですが、小笠原さんは、「在宅看取りは介護保険なしにはできませんでした」と、よくおっしゃいますね。
小笠原:はい。独居の看取りは介護保険がないとできないので。
上野:ああ、独居の場合ですか。
小笠原:そうですね。独居の場合です。家族と同居の場合は、家族は普通通り、仕事ができますよ。
上野:わかりました。それで、介護保険をどう評価しておられるかを、ちゃんと聞きたいと思って。