「アライグマは食べ物を洗わない」など、知るとガッカリな動物の生態を集めた『ざんねんないきもの事典』がベストセラーになっている。実は、「生物」だけでなく「日本史」にも同じような例は少なくない。歴史上の偉人や英雄の言行にもある“知りたくなかった真実”とは──。
歴史ドラマなどで関ヶ原の戦いを描く際に必ずといっていいほど出てくる「小山評定」だが、専門家からは疑問の声が上がっている。
上杉討伐に向かっていた家康のもとに「石田三成挙兵」の一報がもたらされた際、下野国小山に家康が諸将を呼び寄せて軍議を開く。そこで、豊臣恩顧の武将である福島正則が真っ先に家康とともに行動することを宣言、諸将がそれに呼応──というのがよく知られた流れだが、別府大学文学部史学・文化財学科教授の白峰旬氏はこう説明する。
「実は同時代の一次史料には、小山で軍議が開かれたという記載自体がないのです。小山評定は、“家康が豊臣恩顧の諸将からも信頼が厚かった”ということを示すエピソードです。そのため、後世の“徳川史観”のなかで創作されたエピソードだと考えるのが妥当でしょう」
一方、1566年、信長に命じられた美濃攻めに際して、敵の目を盗んで一夜にして築いたと伝えられるのが「墨俣一夜城」だ。大河ドラマ『秀吉』(1996年放送)でもそのエピソードが描かれた。しかし、「現在では記述のある史料の信憑性を疑う専門家のほうが多く、造るのに長い時間がかかった、あるいは秀吉による築城自体を創作とする説もある」(歴史研究家・井手窪剛氏)のだ。
※週刊ポスト2017年7月21・28日号