アメリカ発の世界覇権企業の中でも、新しいビジネスモデルで日本の国内市場にいわば“開国”を迫っているのが、アマゾン、ウーバー(Uber)、エアビーアンドビー(Airbnb)などの“21世紀の黒船”だ。そのうちのひとつ、ウーバーがなぜ日本で苦戦しているのかについて、経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。
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“21世紀の黒船”3社のうち、日本で最も苦戦しているのはウーバーだ。同社は2014年に上陸し、東京でタクシー配車サービスを開始したが、すでに東京からは撤退した。
現在は過疎地のライドシェア(相乗り)サービスにシステムを提供したり、飲食店の料理を自転車などで配達する「ウーバーイーツ」を展開したりする程度で、なかなか事業を拡大できずにいる。
その理由は、そもそも日本では一般人の自家用車による有償旅客送迎が“白タク行為”として法律で禁じられている上、いち早く日本のタクシー業界が対抗策を講じたからである。
ウーバー上陸に危機感を募らせた日本交通の川鍋一朗会長がスマートフォンのタクシー配車アプリ「全国タクシー」を開発し、それを使えば全国47都道府県の提携タクシー会社163グループのタクシー約3万台の中から近くを運行中の車両を簡単に呼ぶことができるようになった。それによってウーバーは完全に封じ込められてしまったのである。
今後、規制緩和で白タクが認められれば、もうひと波乱あるかもしれないが、その緩和の方針が未だ見えない現時点では予測不能だ。
※週刊ポスト2017年7月21・28日号