年を重ねるにつれて、家族や親戚、友達ががんになったという話を聞く機会は増えていく。2人に1人が罹患する時代といわれて久しい。今回、取材したステージIIIの患者さんは本誌・女性セブン記者にこんなことを話してくれた。
「私はがんと闘っているのではありません。がんと共に生きているんです」。
1985年生まれの野口のぞみさん(仮名、31才)。独身。精神保健福祉士として病院に勤務していたが、2013年、悪性リンパ腫と診断される。復職するも2016年に再発。現在は、再発防止を目的とした治療を受けつつ新しい職場で働いている。
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4年前、悪性リンパ腫と診断され、4か月間休職して治療を受けました。復帰すると、仕事量を配慮してくれたり、病気への理解がある職場でしたが、治療の副作用でウイッグになったこと、長く仕事を休んだこと――がんに派生するさまざまな出来事が原因で、人との距離を感じるようになりました。
私だけ取り残されてしまったような感じですね。治療の間、前のように仕事をして友達と遊ぶことができないので、私だけ取り残されてしまっていると思い、周囲とのかかわりが難しい苦しさを感じました。孤独や、職場の人との距離をすごく感じる状況でした。
できるだけ病気のことを隠したいにもかかわらず、自己開示をすれば距離が縮まるんじゃないかと思って、同僚にウイッグだと打ち明けてしまったことがあるんです。けれどびっくりされただけでした。気を使わせることになってしまったのではないかと思うと、なんでそんなことを言ってしまったのかと後悔しました。
そんな状況に悩みつつも、少しずつ元の生活を取り戻しつつありましたが、治療終了から2年半後に再発したことをきっかけに、再び休職して、そのまま退職を決めました。
職場に対して申し訳ないという気持ちがありました。2回目の治療だったので、気持ちがもう…。働くという気持ちがなくなってしまったんです。1回目の治療の時は、“働きたい!”という気持ちが強くあったけれど、“もう休みたい”と思いました。
周囲から何気なくかけられた「仕事のストレスで病気になったんじゃない?」という言葉もつらかったです。