昨秋の神宮大会を制し、春のセンバツでも準優勝に輝いた指揮官の言葉とはとても思えなかった。夏の大阪大会開幕を前に、最後の練習試合を行っていた履正社ベンチから聞こえてきたのは、岡田龍生監督の怒声であり、試合後も嘆き節ばかりだった。
「もう一度、甲子園に立ちたいという気持ちが見えてこない。秋は日本一、春は全国2番でも、このままの状態なら夏はあっという間に終わってしまうかもわからへんです」
履正社の注目は、早実の清宮幸太郎と並ぶ強打者、安田尚憲(ひさのり)だが、この日の試合では、三塁走者の安田が、相手投手のワイルドピッチに気付かず、ホームインできないボーンヘッドがあった。エースの竹田祐と共に、チームの大黒柱である安田に対し、岡田監督は容赦なく叱責した。
「(履正社OBの)T‐岡田(現・オリックス)は絶対にあんなミスはしなかったし、積極的に盗塁も仕掛けていた。確かに安田はホームランの数(高校通算60本塁打)だけは多いですけど、打者としては高校時代の岡田の方が完全に上ですね」