うだるような暑さに列島が包まれた7月17日、天皇皇后両陛下は横浜みなと博物館(神奈川県)に足を運ばれ、横浜港で保存・展示されている帆船「日本丸」などをご覧になった。
「50mの高さにある帆が徐々に張られていく様子を、両陛下は興味深そうにご覧になっていました。時折、美智子さまが上を指さされ、陛下にお話しされていました。大変な気温の高さでしたが、両陛下はボランティアスタッフや居合わせた人に笑顔で手を振られていました」(皇室記者)
その日の抜けるような空は、「海の日」にふさわしい深く穏やかな青色をたたえていた。だが2週間前、同じ空は自然の脅威となって国土と国民に大きな傷跡を残した。
死者34名、安否不明者7名(7月18日現在)──7月上旬に福岡・大分を中心とした九州北部を襲った豪雨だ。
福岡県朝倉市では、8月に出産を控えて里帰りしていた26才の女性が、鉄砲水で流された自宅の1階部分で見つかった。女性は、1才になる長男を抱きかかえるようにして亡くなっていた。愛情を一身に浴びてすくすくと育つ小さな命と、この世に誕生することを今か今かと待ちわびていた小さな命は、母親ごと濁流に呑み込まれた。
街中に土砂や流木が溢れ、凄惨な被害の全容はいまだつかめていない。自宅に戻れず避難所生活を強いられる人は1000人を超え、避難指示が出されている地域では、多くの人が二次被害への恐怖で眠れぬ夜を過ごしている。
「両陛下は、豪雨の発生直後からテレビのニュースや新聞を通じて情報収集に努められ、甚大な被害に大変胸を痛めていらっしゃいました。同時に、安否のわからない人や犠牲者の遺族、被災者のことを心から案じられているといいます」(宮内庁関係者)
皇室に嫁がれて以来、美智子さまがずっと胸に刻まれてきた思いがある。
《皇室は祈りでありたい》
国民とともに歩まれる陛下に寄り添い、美智子さまはさまざまな地を巡り、先の戦争の被害者や天災の被災者に心を寄せる「祈りの旅」を続けてこられた。
「今回の豪雨を受けて、両陛下は一日も早く被災地に足を運び、被災者を勇気づけたいとお考えになっているようです。早ければ8月上旬にも訪問される可能性があるといいます」(前出・宮内庁関係者)
ともに80才を超えるご高齢の両陛下にとって、夏の暑さ自体が大変なご負担であることは明白だ。
「加えて、被災直後の訪問の場合、現地の受け入れ態勢や警備面での負担はかけられないからと日帰りの強行軍になることがほとんどです。8月は広島・長崎での原爆の日に加え、両陛下がもっとも重要と位置づけてこられた終戦記念日があります。多忙な日程が控える直前にもかかわらず、負担の大きい被災地訪問を強行されようというのには、国民に寄り添いたいという両陛下の強いお気持ちが感じられます」(前出・宮内庁関係者)
もともと、両陛下は10月に『全国豊かな海づくり大会』へのご臨席のため福岡にお出ましになる予定だった。
「現実的には、その訪問に合わせる形での被災地訪問も考えられます。ですが、それでは発災から3か月以上も経ってしまいます。“一日でも早く”という両陛下の思いはかなりお強いようです」(前出・宮内庁関係者)
撮影/雑誌協会代表取材
※女性セブン2017年8月3日号