獄中でノーベル平和賞を受賞し、7月13日にがんで死去した中国の民主活動家、劉暁波氏は、死してなお弾圧を受けている。
まず中国では、彼の死そのものを知ることができない。NHKが死亡のニュースを配信すると、中国では映像が突然黒塗りになった。インターネットで追悼の意を表わそうにも、ことごとく書き込みが削除され、ロウソクの絵文字すら消されてしまう。さらには墓が反政府活動のシンボルにならないよう、“遺族の意向”との名目で海に散骨され、遺骨すら遺すことを許されなかった。
こうした対応は、中国がいかに劉氏を恐れていたかの表われでもある。劉氏は末期がんの治療を海外で受けることを望んだが、中国当局は最後まで出国許可を出さなかった。実は治療先の候補として挙がっていたのが日本だった。『習近平VSトランプ』などの著書がある遠藤誉・筑波大学名誉教授が明かす。
「私が連絡を取り合っている在米華人の人権団体『公民力量』のメンバーである弁護士から、7月2日に『飛行機の移動時間も短く、医療も進んでいる日本で、劉氏に治療を受けさせるか、日本から専門医を派遣するなど、日本で呼びかけてもらえないか』という中国語のメールが届いていたのです」
ワシントンなどに拠点を置く公民力量は、劉氏の人権活動を長く支援してきた団体だ。彼らから連絡を受けた遠藤氏は、日本で専門医探しや、政府に働きかける道を模索していたが、劉氏は帰らぬ人となってしまった。遠藤氏は、劉氏を救えなかった悔しさをにじませる。
「ドイツのメルケル首相が『劉氏をドイツで治療させたい』と直接習近平国家首席に伝えたのに対し、安倍首相はドイツでの日中首脳会談で劉氏の問題に触れもしなかった。日本は中国の顔色ばかり見ていてはいけない」
安倍首相が「主張する外交」でノーベル平和賞を受賞することはないだろう。
※週刊ポスト2017年8月4日号